DRとは、災害や大きなシステム障害が起きたときに、ITシステムやデータを再び使える状態に戻すための対策です。
かんたんに言うと、会社のシステムが止まっても、できるだけ早く仕事を再開するための備えです。
この記事では、DRの意味や仕組み、具体例、BCPやバックアップとの違いを初心者向けに解説します。
関連するIT用語・ビジネス用語をまとめて確認したい方は、IT用語・ビジネス用語一覧もあわせてご覧ください。
DRとは
DRとは、地震や火災、停電、機器の故障などに備え、止まったITシステムを復旧するための取り組みです。
復旧とは、使えなくなったシステムを、再び使える状態に戻すことです。
DRは「Disaster Recovery」の略
DRは、英語の「Disaster Recovery」を短くした言葉です。
Disasterは「災害」、Recoveryは「復旧」という意味です。日本語では「災害復旧」と訳されます。
ITにおけるDRの意味
ITにおけるDRは、会社で使うシステムやデータ、通信の仕組みなどを復旧するための対策です。
ITシステムとは、受注、会計、顧客管理などの仕事を、コンピューターで行うための仕組みです。
たとえば、注文を受け付けるシステムが止まったときに、予備のシステムへ切り替えて仕事を再開します。
DRの対象になるもの
DRの対象は、パソコンやサーバーだけではありません。
仕事に必要なシステム、データ、通信設備、復旧手順なども対象になります。
- 受注や会計などの業務システム
- 顧客情報や売上情報などのデータ
- サーバーやパソコン
- ネットワークや通信設備
- 復旧作業の手順
- 担当者の役割や連絡先
サーバーとは、データを保存したり、サービスを動かしたりするためのコンピューターです。
ネットワークとは、パソコンやサーバーをつなぎ、データをやり取りするための仕組みです。
身近な例で分かるDR
DRは、家の鍵をなくしたときに備えて、予備の鍵を用意しておくことに似ています。
普段使う鍵がなくなっても、予備の鍵があれば家に入れます。ただし、予備の鍵の場所や使い方が分からなければ、すぐには使えません。
ITのDRも同じです。予備のシステムやデータだけでなく、切り替える方法や担当者も決めておきます。
DRが必要になる理由
現在は、多くの会社が仕事にITシステムを使っています。
システムが長い時間止まると、注文の受付、商品の発送、会計、問い合わせ対応などができなくなる場合があります。
システムの停止に備えるため
システム障害とは、画面が開かない、処理が止まる、データを見られないなどの問題です。
復旧方法を事前に決めておけば、問題が起きたときにも作業を進めやすくなります。
大切なデータを守るため
顧客情報や注文情報などのデータは、会社の仕事に欠かせません。
データを別の場所にも保存しておけば、元の場所が使えなくなった場合でも戻せます。
会社の仕事を早く再開するため
DRの目的は、機器を直すことだけではありません。
止まっていた注文受付や顧客対応などの仕事を、できるだけ早く再開することが大切です。
DRが使われる場面
DRは、地震や台風などの自然災害だけを対象にした対策ではありません。
システムやデータが使えなくなる、さまざまな問題に備えます。
地震や台風などの災害が起きたとき
地震、台風、洪水などにより、建物や機器が使えなくなることがあります。
別の地域に予備の設備を用意しておけば、被害を受けていない場所でシステムを動かせます。
火災や停電が起きたとき
火災や長時間の停電が起きると、サーバーなどの機器を動かせない場合があります。
予備の電源や別の施設を用意することで、システムが止まる時間を短くできます。
機器の故障や設定ミスが起きたとき
サーバーの故障や設定ミスにより、システムが使えなくなることもあります。
このような問題も、DRの対象に含める場合があります。
サイバー攻撃を受けたとき
サイバー攻撃とは、不正なアクセスや悪意のあるプログラムによって、システムやデータに被害を与える行為です。
攻撃の影響を受けていないデータを保管しておけば、安全を確認したうえで復旧できます。
DRの仕組み
DRでは、問題が起きてから復旧方法を考えるのではありません。
データの保存、予備のシステム、復旧する順番などを事前に決めます。
データを別の場所に保存する
重要なデータは、元のデータと同じ場所だけに保存しないようにします。
別の建物、離れた地域、クラウドなどにも保管します。
予備のサーバーやシステムを用意する
元のシステムが使えなくなった場合に備えて、予備のサーバーやシステムを用意します。
すぐに使える状態にする方法もあれば、必要になってから準備する方法もあります。
予備のシステムへ切り替える
元のシステムが使えなくなったときは、予備のサーバーやシステムへ切り替えます。
誰が連絡し、誰が切り替え作業を行うのかも決めておきます。
決めた手順に沿って確認する
システムを切り替えた後は、データが正しいか、画面が動くか、仕事を再開できるかを確認します。
復旧手順には、連絡先、作業の順番、確認方法などを書いておきます。
DRの具体例
DRの方法は、会社の規模やシステムの重要度によって異なります。
ここでは、代表的な例を紹介します。
別の地域にデータを保存する
東京で使っているシステムのデータを、大阪や北海道などの別の地域にも保存します。
離れた地域に保存すれば、一つの地域で災害が起きた場合にも備えやすくなります。
クラウドに予備のシステムを用意する
クラウドとは、自分の会社にある機器ではなく、サービス会社が用意したコンピューターや保存場所を、インターネットを通じて使う仕組みです。
クラウド上に予備のシステムを用意すれば、自社で多くの機器を持たずにDR対策を行えます。
別のデータセンターへ切り替える
データセンターとは、多くのサーバーを安全に置くための専用の施設です。
普段使う施設が止まった場合に、別の施設にある予備のシステムへ切り替えます。
DRサイトとは
DRサイトとは、災害や障害が起きたときに使う、予備の施設やシステムです。
準備の状態によって、ホットサイト、ウォームサイト、コールドサイトなどに分けられます。
| 種類 | 準備の状態 | 復旧の早さ | 費用の傾向 |
|---|---|---|---|
| ホットサイト | すぐ使える状態 | 早い | 高くなりやすい |
| ウォームサイト | 一部を準備している | 中間 | 中間 |
| コールドサイト | 場所や最低限の設備を用意している | 時間がかかる | 抑えやすい |
ホットサイト
ホットサイトは、すぐにシステムを動かせる状態にした予備の施設です。
短い時間で仕事を再開しやすい一方で、常に設備を動かすため、費用は高くなりやすくなります。
ウォームサイト
ウォームサイトは、予備の機器やデータの一部を準備しておく方法です。
ホットサイトより復旧に時間がかかりますが、費用を抑えやすくなります。
コールドサイト
コールドサイトは、場所や最低限の設備だけを用意しておく方法です。
問題が起きてから機器やデータを準備するため、復旧には時間がかかります。
DRで重要なRTOとRPO
DRを考えるときは、何時間でシステムを戻すのか、何時間前のデータまで戻せればよいのかを決めます。
この二つの目標を表す言葉が、RTOとRPOです。
RTOは「何時間で復旧するか」の目標
RTOは、システムが止まってから、再び使えるようになるまでの目標時間です。
たとえば、RTOが4時間なら、停止してから4時間以内の復旧を目指します。
RPOは「何時間前のデータまで戻すか」の目標
RPOは、問題が起きた時点から、どこまで前のデータに戻ってよいかを表す目標です。
たとえば、RPOが1時間なら、最大で1時間分のデータが戻らない場合を考えます。
RTOとRPOの違い
| 用語 | 表すもの | 例 |
|---|---|---|
| RTO | 何時間で復旧するか | 4時間以内に再開する |
| RPO | 何時間前のデータまで戻すか | 1時間前のデータまで戻す |
RTOは「いつまでに戻すか」、RPOは「どの時点まで戻すか」と考えると分かりやすいでしょう。
DRとBCPの違い
DRと一緒に使われる言葉に、BCPがあります。
どちらも災害や障害に備える考え方ですが、対象となる範囲が異なります。
DRはITシステムを復旧するための対策
DRは、ITシステムやデータの復旧を中心とした対策です。
サーバー、ネットワーク、業務システムなどを再び使える状態に戻します。
BCPは会社の仕事を続けるための計画
BCPは「Business Continuity Plan」の略です。日本語では「事業継続計画」と呼ばれます。
かんたんに言うと、災害や事故が起きても、会社の大切な仕事を続けるための計画です。
| 項目 | DR | BCP |
|---|---|---|
| 主な対象 | ITシステムやデータ | 会社の重要な仕事全体 |
| 主な目的 | システムを復旧する | 仕事を続ける |
| 対策の例 | データ保存、予備システム | 連絡体制、作業場所、人員の手配 |
DRは、BCPを実現するための対策の一つです。
たとえば、会社が注文の受付を続けるには、受付を行うITシステムのDR対策が必要になります。
DRとバックアップの違い
DRとバックアップは、同じ意味ではありません。
バックアップは、DRを支える方法の一つです。
バックアップはデータのコピーを保管すること
バックアップとは、問題が起きたときにデータを戻せるように、同じ内容のコピーを別の場所に保管することです。
文書、画像、顧客情報、注文情報などを戻すために使います。
DRはシステム全体を復旧すること
DRでは、データだけでなく、サーバー、ネットワーク、業務システムなども使える状態に戻します。
復旧する順番、担当者、連絡方法などもDRに含まれます。
復旧と復元の違い
復旧は、システム全体を再び使える状態に戻すことです。
復元は、バックアップとして保存しておいたデータを元に戻すことです。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 復旧 | システム全体を使える状態に戻す |
| 復元 | 保存しておいたデータを元に戻す |
バックアップだけでは十分でない場合がある
データのコピーがあっても、そのデータを使うシステムがなければ仕事を再開できません。
そのため、バックアップに加えて、予備のサーバーや復旧手順も準備します。
クラウドを使ったDRとは
クラウドを使ったDRとは、クラウド上にデータや予備のシステムを用意する方法です。
自社で大きな予備設備を持たなくても、必要なシステムを準備できます。
クラウドDRの仕組み
普段使っているシステムのデータを、クラウド上にも保存します。
元のシステムが使えなくなった場合は、クラウド側に用意した予備のシステムを動かします。
クラウドを使う利点
自社で別の建物や多くの機器を用意する場合と比べて、始めやすいことが利点です。
必要に応じて、使うサーバーや保存場所の量を増やしたり減らしたりできます。
クラウドでも復旧手順は必要
クラウドを利用しても、自動的にすべてが復旧するわけではありません。
切り替える方法や担当者の役割を決め、実際に復旧できるかを確認する必要があります。
DR対策を進める手順
DR対策では、すべてのシステムを同じ方法で守る必要はありません。
止まったときに仕事への影響が大きいシステムから、順番に対策します。
復旧するシステムの優先順位を決める
まず、どのシステムが止まると会社の仕事に大きな影響が出るかを確認します。
受注、決済、顧客対応などに使うシステムは、優先度が高くなる場合があります。
復旧までの目標時間を決める
システムごとに、どのくらいの時間で復旧する必要があるかを決めます。
短い時間での復旧を目指すほど、予備の設備や準備にかかる費用は高くなりやすくなります。
データの保存方法を決める
どのデータを、どの場所に、どのくらいの間隔で保存するかを決めます。
保存したデータを、実際に元へ戻せるかも確認します。
復旧手順を作る
問題が起きたときの連絡先、作業の順番、確認方法を文書にします。
担当者が不在でも対応できるように、短く分かりやすくまとめます。
定期的にDR訓練を行う
DR訓練とは、災害や障害が起きたと想定して、復旧作業を試すことです。
訓練を行うと、手順が不足している場所や、分かりにくい説明を見つけられます。
初心者が間違えやすい点
DRはバックアップだけではない
バックアップは、データのコピーを保管する対策です。
DRには、予備のサーバー、システム、復旧手順、担当者の役割なども含まれます。
DRは自然災害だけを対象にするとは限らない
DRには災害という意味が含まれていますが、地震や台風だけを対象にするわけではありません。
停電、機器の故障、設定ミス、サイバー攻撃なども対象になる場合があります。
予備のシステムを用意するだけでは終わらない
予備のシステムがあっても、切り替える方法が分からなければすぐには使えません。
連絡先、作業の順番、確認方法まで決めておくことが大切です。
一度作った復旧手順も見直しが必要
会社で使うシステムや担当者は、時間とともに変わります。
今のシステムや体制に合っているかを定期的に確認し、内容を直します。
DRに関するよくある質問
DRは何の略ですか?
DRは「Disaster Recovery」の略です。
日本語では「災害復旧」と訳され、ITシステムやデータを復旧するための対策を表します。
DRとはIT用語でどのような意味ですか?
IT用語のDRとは、災害や大きな障害で止まったシステムを、再び使える状態に戻すための取り組みです。
データの保存、予備のシステム、復旧手順、訓練などが含まれます。
DRとBCPは同じですか?
同じではありません。
DRはITシステムの復旧が中心です。BCPは、会社の大切な仕事を続けるための計画全体を指します。
DRとバックアップの違いは何ですか?
バックアップは、データのコピーを別の場所に保管することです。
DRは、そのデータや予備の設備を使い、システム全体を復旧することです。
小さな会社にもDR対策は必要ですか?
会社の規模にかかわらず、仕事に必要なデータやシステムがある場合は、備えを考えることが大切です。
大がかりな設備を用意するのではなく、データの保存や連絡手順の整理から始められます。
クラウドを使えばDR対策は不要ですか?
クラウドを使っていても、DR対策が不要になるわけではありません。
データの保存場所、復旧方法、サービスが止まった場合の対応などを確認する必要があります。
DRサイトは必ず必要ですか?
すべての会社が専用のDRサイトを持つ必要はありません。
システムの重要度や予算に合わせて、クラウドや別の施設を利用する方法もあります。
まとめ|DRとはITシステムを復旧するための備え
DRとは、災害や大きなシステム障害が起きたときに、ITシステムやデータを再び使える状態に戻すための対策です。
かんたんに言うと、システムが止まっても、できるだけ早く会社の仕事を再開するための備えです。
DRには、データのバックアップ、予備のサーバーやシステム、復旧手順、担当者の役割、DR訓練などが含まれます。
また、DRはITシステムの復旧を中心とした対策です。会社の仕事全体を続けるためのBCPを支える、重要な取り組みです。

