基本設計とは、システムを作る前に「どんな画面にするか」「どんな機能を入れるか」「どんな情報を使うか」を決める工程です。
かんたんに言うと、家を建てる前に間取りを決めるようなものです。いきなり工事を始めるのではなく、先に全体の形を考えます。
ITでは、この「全体の形を決める作業」が基本設計です。この記事では、建築や土木ではなく、システム開発における基本設計を説明します。
ここだけ読めばOK
基本設計とは、システムを作る前に、画面や機能、情報の流れを決める工程です。
「何を作るか」を決めるのが基本設計、「どう作るか」を細かく決めるのが詳細設計です。
ほかのIT用語も知りたい方は、初心者向けのIT用語辞典もあわせてご覧ください。
基本設計とは
かんたんに言うと、システムの大まかな設計図を作ること
基本設計とは、システムの大まかな設計図を作ることです。
システムとは、仕事や生活を助けるための画面や仕組みのことです。たとえば、予約サイト、学校の成績管理、会社の勤怠管理などがあります。
ネットショップを作る場合なら、商品一覧、買い物かご、注文画面、会員登録画面などを考えます。
この段階では、プログラムの細かい書き方までは決めません。まずは、使う人から見える部分を中心に決めます。
この記事ではシステム開発の基本設計を説明します
「基本設計」は、建築や土木でも使われる言葉です。
ただし、この記事ではITやシステム開発で使う基本設計を説明します。
建築や土木の「基本設計」と意味が重なる部分もありますが、この記事では、アプリやWebサービスなどを作る場面を中心にします。
基本設計を理解する前に知っておきたい言葉
基本設計を理解するには、いくつかの言葉を先に知っておくと楽です。
ここでは、初心者がつまずきやすい言葉をかんたんに説明します。
システムとは
システムとは、目的に合わせて動く仕組みのことです。
ITでは、予約する、登録する、検索する、請求書を出すなど、仕事や生活を助ける仕組みを指すことが多いです。
機能とは
機能とは、システムができることです。
たとえば、検索する、登録する、変更する、削除する、メールを送るなどです。
データとは
データとは、システムで使う情報のことです。
たとえば、名前、住所、メールアドレス、商品名、注文日、金額などです。
設計書とは
設計書とは、作る内容をまとめた書類です。
基本設計で決めたことを書いたものを、基本設計書と呼びます。
基本設計はシステム開発のどこで行うのか
要件定義のあとに行う
基本設計は、多くの場合、要件定義のあとに行います。
要件定義とは、「何が必要か」を整理する作業です。たとえば、「予約できるようにしたい」「在庫を見られるようにしたい」といった希望をまとめます。
そのあとで、基本設計に進みます。基本設計では、要件定義で決めた内容をもとに、画面や機能の形を考えます。
プログラムを作る前に決めておく
基本設計は、プログラムを作り始める前に行います。
プログラムとは、コンピューターに動いてもらうための命令のことです。
先に大事なことを決めておくと、作る人と頼む人の認識を合わせやすくなります。
基本設計で何をするのか
画面の形を決める
基本設計では、まず画面の形を決めます。
たとえば、ログイン画面、一覧画面、入力画面、確認画面などを考えます。
ボタンをどこに置くか、どんな項目を入力するかも整理します。
機能の内容を決める
次に、システムに必要な機能を決めます。
たとえば、会員を登録する、商品を検索する、注文を取り消す、メールを送るなどです。
機能を一覧にすると、作るものの範囲が分かりやすくなります。
情報の流れを決める
基本設計では、情報がどのように流れるかも決めます。
たとえば、注文画面で入力した内容が、確認画面に表示され、注文データとして保存される流れです。
この流れを先に整理しておくと、どの画面に何が必要かを考えやすくなります。
ほかのシステムとやり取りする内容を決める
システムは、ほかのシステムとつながることがあります。
たとえば、支払いサービス、メール送信サービス、会員管理システムなどです。
基本設計では、どのシステムとつなぐのか、どんな情報をやり取りするのかを整理します。
基本設計と詳細設計の違い
基本設計と詳細設計は、どちらもシステムを作る前に行う設計です。
ただし、決める内容の細かさが違います。
基本設計は「何を作るか」を決める
基本設計は、主に「何を作るか」を決めます。
利用者が見る画面、使う機能、情報の流れなどを決めます。
また、依頼する人と作る人の間で「この内容で作る」という合意をとる役割もあります。
ここがずれていると、あとから「思っていたものと違う」となりやすくなります。そのため、基本設計では、作るものの全体像を分かりやすくそろえることが大切です。
詳細設計は「どう作るか」を決める
詳細設計は、「どう作るか」を細かく決める工程です。
たとえば、ボタンを押したあとにどんな処理をするか、入力された内容をどの順番で確認するかなどを決めます。
詳細設計は、プログラムを作る人が迷わず作業できるように、細かい手順を整理するものです。
基本設計書と詳細設計書の違い
基本設計書は、依頼者や利用者にも分かる内容が中心です。
詳細設計書は、作る人向けの細かい内容が中心です。
| 項目 | 基本設計 | 詳細設計 |
|---|---|---|
| 決めること | 何を作るか | どう作るか |
| 見る人 | 依頼者、利用者、作る人 | 主に作る人 |
| 主な内容 | 画面、機能一覧、情報の流れ | 処理の手順、細かい動き、内部の仕組み |
| 目的 | 依頼者と作る人で「これを作る」と合意する | 作る人が迷わず作れる状態にする |
基本設計書とは
基本設計の内容をまとめた書類
基本設計書とは、基本設計で決めた内容をまとめた書類です。
「どんな画面を作るか」「どんな機能を入れるか」「どんな情報を使うか」などを書きます。
基本設計書は、単なるメモではありません。依頼する人と作る人が「この内容で進める」と確認するための大切な資料です。
基本設計書に書く主な項目
基本設計書に書く内容は、システムによって変わります。
ただし、よく書かれる項目には、次のようなものがあります。
- システムの目的
- 画面の一覧
- 機能の一覧
- 入力する項目
- 表示する項目
- 使う情報の一覧
- 書類やメールの内容
- ほかのシステムとやり取りする内容
- 作ったあとに使い続けるうえで気をつけること
基本設計書のサンプルを見ると分かりやすいこと
基本設計書のサンプルを見ると、どこまで細かく書けばよいか分かりやすくなります。
大まかすぎると、作る人が迷います。細かすぎると、読む人がつかれます。
初心者は、まず画面一覧や機能一覧のような分かりやすい部分から見ると理解しやすいです。
基本設計の主な成果物
成果物とは、作業の結果として作る資料やファイルのことです。
基本設計では、基本設計書だけでなく、画面や機能を整理した資料も成果物になります。
画面一覧
画面一覧は、システムに必要な画面をまとめた表です。
たとえば、ログイン画面、トップ画面、検索画面、登録画面などを書きます。
画面一覧があると、どの画面が必要かを確認しやすくなります。
機能一覧
機能一覧は、システムに必要な機能をまとめた表です。
たとえば、検索、登録、変更、削除、印刷、メール送信などです。
機能一覧があると、作る範囲を確認しやすくなります。
情報の一覧
情報の一覧は、システムで使う情報をまとめたものです。
たとえば、会員名、メールアドレス、商品名、注文日、金額などです。
どの情報が必要かを先に決めることで、画面や機能も考えやすくなります。
書類やメールの設計
システムでは、書類を出したり、メールを送ったりすることがあります。
たとえば、請求書、注文書、登録完了メール、予約確認メールなどです。
基本設計では、これらにどんな内容を入れるかを決めることがあります。
ほかのシステムとやり取りする内容
ほかのシステムとは、今作っているシステムとは別のシステムのことです。
たとえば、決済サービスやメール配信サービスなどです。
基本設計では、どのシステムとつなぐのか、どんな情報を渡すのかを整理します。
基本設計書の書き方
読む人の立場を意識して書く
基本設計書は、システムを依頼した人と、プログラムを作る人の両方が読む書類です。
そのため、依頼者が読んでも理解できるように、専門用語ばかりの書き方は避けます。
一方で、作る人が作業を始められるように、画面の項目、ボタンの動き、使う情報などは具体的に書く必要があります。
基本設計書は、依頼する側と作る側をつなぐ橋渡しのような役割を持ちます。
あいまいな言葉を避ける
基本設計書では、あいまいな言葉をできるだけ避けます。
たとえば、「すぐに表示する」「分かりやすくする」「適切に処理する」だけでは、人によって受け取り方が変わります。
「3秒以内に表示する」「赤い文字で知らせる」のように、できるだけ具体的に書くと伝わりやすくなります。
決まっていないことを残さない
基本設計では、決まっていないことをそのままにしないことが大切です。
まだ決められない場合は、「未決定」と書きます。そして、あとで誰が決めるのかも残します。
これにより、あとで確認すべきことが分かりやすくなります。
あとでテストしやすい形にする
テストとは、システムが正しく動くかを確認することです。
基本設計書が分かりやすいと、あとでテストもしやすくなります。
たとえば、「入力が空ならエラーを出す」と書いておけば、その通りに動くかを確認できます。
システム開発では、品質も大切です。品質、費用、期限の考え方は、QCDとはの記事でも説明しています。
基本設計書テンプレートを使うときの注意点
テンプレートは「ひな形」として使う
テンプレートとは、あらかじめ用意されたひな形のことです。
基本設計書テンプレートを使うと、書く項目を整理しやすくなります。
ただし、テンプレートをそのまま埋めるだけでは、システムに合わないことがあります。
システムに合わない項目は見直す
システムによって、必要な項目は変わります。
小さな問い合わせフォームと、大きな販売管理システムでは、必要な設計内容が違います。
テンプレートにある項目でも、必要がなければ無理に入れなくてよい場合があります。
基本設計と外部設計の違い
ほぼ同じ意味で使われることもある
基本設計と外部設計は、現場によって近い意味で使われることがあります。
外部設計とは、利用者から見える部分を中心に決める設計のことです。
たとえば、画面、操作の流れ、表示する項目などです。
会社や現場によって呼び方が変わる
ITの現場では、会社によって言葉の使い方が少し変わることがあります。
ある会社では「基本設計」と呼び、別の会社では「外部設計」と呼ぶこともあります。
大切なのは、言葉だけで判断しないことです。その資料で何を決めるのかを確認しましょう。
基本設計と実施設計の違い
実施設計は建築や土木でよく使われる言葉
実施設計は、建築や土木でよく使われる言葉です。
建物や道路などを作るときに、工事を進めるための細かい図面や内容を決める工程として使われます。
そのため、「基本設計 実施設計 違い」と検索している人は、建築や土木の情報を探している場合があります。
ITの記事では詳細設計との違いを押さえる
ITやシステム開発では、まず「基本設計」と「詳細設計」の違いを押さえると分かりやすいです。
基本設計は、利用者から見える部分を中心に決めます。
詳細設計は、実際に作るための細かい手順を決めます。
初心者が基本設計で間違えやすい点
詳細設計まで書きすぎる
基本設計で、細かい処理まで書きすぎることがあります。
もちろん、必要な情報を書くことは大切です。ですが、基本設計の目的は、まず全体像をそろえることです。
細かい作り方は、詳細設計で整理するほうが読みやすくなります。
利用者の使い方を考えずに決める
基本設計では、利用者の使い方を考えることが大切です。
画面がきれいでも、使う人が迷うならよい設計とは言えません。
実際に使う人、管理する人、問い合わせを受ける人など、関係する人を考えて決める必要があります。
関係する人の整理については、ステークホルダーとはの記事でも説明しています。
要件定義があいまいなまま進める
要件定義があいまいなままだと、基本設計もあいまいになります。
たとえば、「便利な検索機能がほしい」だけでは、どんな検索なのか分かりません。
商品名で探すのか、日付で探すのか、金額で探すのかを決める必要があります。
あとから作る範囲が広がることを見落とす
基本設計で合意した内容があいまいだと、あとから「この機能も必要」「この画面もほしい」と作る範囲が広がることがあります。
もちろん、あとから必要なことに気づく場合もあります。
ただし、最初に作る範囲を分かりやすく決めておくと、追加する内容を整理しやすくなります。
基本設計に関するよくある質問
基本設計を英語で言うと?
基本設計は、英語では「Basic Design」と表すことがあります。現場では、略して「BD」と呼ばれることもあります。
ただし、英語表記は会社や資料によって変わります。
機能を中心に説明する場合は「Functional Design」、システム全体の構成を考える意味では「Architectural Design」と表されることもあります。
また、利用者から見える部分を中心に決める意味で「External Design」と呼ばれることもあります。
そのため、英語名だけで判断せず、その資料で何を決めているのかを見ることが大切です。
基本設計は誰が担当する?
基本設計は、主にシステムエンジニアが担当します。
システムエンジニアとは、システムの内容を考え、依頼者や作る人と相談して形にする人です。
ただし、画面の使いやすさは利用者の意見も大切です。そのため、現場の人と相談しながら進めます。
基本設計にはどれくらいの期間がかかる?
基本設計にかかる期間は、システムの大きさによって変わります。
小さなシステムなら短い期間で終わることもあります。大きなシステムなら、何週間もかけて整理することがあります。
大切なのは、期間の長さよりも、作る内容が分かりやすく整理されていることです。
基本設計書と仕様書の違いは?
仕様書とは、システムの内容や条件を書いた書類全般を指すことがあります。
基本設計書は、その中でも基本設計の内容をまとめた書類です。
つまり、基本設計書は仕様書の一種として扱われることがあります。
基本設計書は必ず必要ですか?
システムの大きさや作り方によって変わります。
ただし、作る内容を文章や図で残しておくと、あとから確認しやすくなります。
小さなシステムでも、画面や機能の一覧だけは残しておくと安心です。
まとめ|基本設計とは、作る前にシステムの形を決める工程
基本設計とは、システムを作る前に、画面や機能、情報の流れなどを決める工程です。
いきなり作り始めるのではなく、先に全体の形をそろえることで、依頼する人と作る人の認識を合わせやすくなります。
- 基本設計は、主に「何を作るか」を決める
- 詳細設計は、主に「どう作るか」を決める
- 基本設計書は、基本設計の内容をまとめた書類
- 基本設計には、依頼者と作る人で合意をとる役割もある
- 成果物とは、作業の結果として作る資料やファイルのこと
- テンプレートは便利だが、システムに合わせて見直すことが大切
初心者は、まず「基本設計=作る前に全体の形を決めること」と覚えると分かりやすいです。
そのうえで、詳細設計との違いや、基本設計書に何を書くのかを少しずつ押さえていきましょう。
